独占連載コラム/嶋田智之の『人生はペペロンチーノ』【Vol.2】

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Vol.2
気分は”地味色イタリアン”

クルマ、買おっかなー。

……なんてことを考えだすと、妄想は暴走しはじめる。静かに、深く、そして酔っぱらったオヤジのタワゴトのようにダラダラと。前回のここのコラム原稿を書いてるときに勢いで決め、宣言しちゃってからは、土曜の夜だけじゃなくて毎晩バリバリ暴走してる感じだ。……あ。暴走してるんで、今回は長文になっちゃうかも。

さて、ここしばらくの妄想の暴走は、“色” である。車種も決めてないというのに、車体の “色” だ。この『カエルナラ イタリア』でいい出物が出てきたら飛びつくもんねー! と宣言したってことは当然チューコ車になるわけで、そうなると選択の余地は限られるっていうのに、“色” なのである。我がことながら素直にアホだと思う。

でもね、“色” って重要でしょ? もちろん常に同じ空間を共有することになるインテリアのカラーも重要だけど、一番最初に目に入るボディ・カラーはもっと重要。服がそうであるように、誰だって気に入ってる色味のモノを羽織りたい。それはきっと無意識下にある自然の欲求なのだろうと思う。

──ボディ・カラー。

イタリア車といえば、ナショナル・カラーに由来する情熱の赤。あるいは華やかさでは引けをとらない黄色。

確かに多くのイタリア車に似合うと思う。実際に赤いアルファや黄色いフィアットを見たりすると、素直に「いいなー」と感じちゃう。赤かったり黄色かったりするイタリアン・スーパーカーも、もちろん。だから否定する気なんて全くないのだけど、僕の中では 「イタ車は赤か黄以外がいいな」だったりする。というか、むしろ「地味色のイタ車がいいな」なのだ。

例えば、スーパーカー。

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ダーク・ブルーのフェラーリ365GT/4ベルリネッタ・ボクサー。……うん、カッコイイ。

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存在としても地味めなフェラーリ・モンディアルがやっぱり地味めなシルバーに塗られていたりすると……うん、いいねぇ。

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真ん中の血のように鮮やかに赤い生産型ランチア・ストラトスにはもちろん目を惹き付けられたのだけど、色味からすると手前のストラトス・ゼロのブラウンがかったカラーの方が好きで、もちろん滅多に見られないクルマだってこともあるけれど、トリノのミュージアムで、僕はしばらくストラトス・ゼロの前から離れられなかった。

あの1970年代半ば過ぎの第1次スーパーカー・ブームのとき、僕が初めて出逢ったスーパーカーはフェラーリ308GTBで、そのボディ・カラーが濃紺だったせいか、僕は地味色のスーパーカーに全く抵抗がない。というか、派手めな色と地味めな色が並んでいたら、地味色の方をとっぷりと眺めてしまう習性がある感じだ。

でも、実はそれってスーパーカーに限ったことじゃなくてイタ車全体にいえることだったんだな、と気づいてから何年が経っただろう? それもスタイリングに凝ったデザインが施されてるクルマほど華やかな色より抑えの効いた色がいいな、なんてすんなり思っちゃうのだ。

例えばスタイリング・デザインに何ともいえない色気があることにかけては世界の頂点級にあるアルファロメオ。

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日本で最も売れたのは赤だった……というか、ほとんどが赤だったといえるくらいだった156も、赤が最も似合ってるとは思いながらも、たまに見掛けるシルバーとか紺とかにときめいちゃう。

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アルファGTも赤が多かったけど、灰色じみたシルバーが最も好きだったりする。

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今も大好きでいつかアシにしたいと思ってるブレラは、赤ばっかりという印象こそないけれど、やっぱりダークめなシルバーとかブラックがいいな、なんて思ってる。

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ビッグ・サルーンにしてはデザイン凝り過ぎでしょ? な166にはさすがにストレートな赤は少なかったけど、やっぱり控えめな色がいい。僕の166は“オーロラ・パール”という特殊なカラーだけど、昼間の光の下で見たらベージュにしか見えないところが気に入ってる。

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スパイダーもほとんどが赤という印象が強いけど、ごく稀にこうした地味色に出くわすと妙に燃えてくる。というか、えらく欲しくなる。

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ジュリア・クーペも赤が多いしホントに赤の似合うクルマだと思うけど、地味色だってものすごーく似合うクルマだと感じちゃうのだよね。……僕だけだろうか?

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実車でこんなのは見たことないけど、このアルファスッドのブラウンなんて、まさに理想的。こんなにスッドに似合う色なんて他にない、なんて思っちゃう。

でも、地味色が最も巧みなのはどのブランド? といえば、それはもうランチアに尽きるんじゃないかと思う。

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ほら、スポーツカーだってこんなですぜダンナ。ベータ・モンテカルロの個人的ベスト・カラーはこれ。

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そして感動的なのはコレコレ。00年代のフラッグシップだったテージスのボディ・カラーは、ほんとに絶妙なものが多かった。このブルーなのかパープルなのかグレーなのか表現に困るような地味色。一発でやられちゃう。

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もちろんボトム・エンドにだって手抜かりはない。このイプシロンのカラー、白系であることは確かなんだけど、ただの白系じゃない。クリームがかった、綺麗な地味色なのだ。

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そういえばランチアは、イプシロンの先祖であるY10の時代から、すでに小さなクルマにこういう色を導入してたもんなぁ……。

こうした僕の地味色イタリアン好きはもう記憶にないくらい昔からなのだけど、地味色イタリアン好きも間違ってはいないのだな、と思わされた出来事があったことは忘れられない。

2006年の秋。“冷酷・非情” と記されることの多かった故エンツォ・フェラーリの本当の人となりを知りたくて、イタリアのモデナ/マラネロ辺りを取材して回ったときのこと。フェラーリ社の財務を担当し、フェラーリ家の資産管理まで任されていたカルロ・ベンツィさんとお会いした。彼の愛車は “世界で最も美しいステーション・ワゴン” と評された、アルファロメオ156スポーツワゴン。そしてそのボディ・カラーが実にしっとりとした濃紺だったのだ。「綺麗な紺色ですね。日本でアルファ156といえば、ほとんどが赤なのに……」と思わずクチにした僕に、ベンツィさんはニコやかな微笑みを浮かべながらこういったのだ。「イタリアといえば赤だけど、華やかなスタイリングのクルマに華やかなボディ・カラーだと、僕はちょっとエレガンスに欠けると思うんだ。凝ったデザインのクルマには抑えの効いた色が似合うと思うよ」。

おそらく、そこから地味色イタリアン好きは加速したかも知れない。

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フィアット・パンダは大衆車の中の大衆車だけど、デザインは実はめちゃめちゃ凝ったモノ。……ほら、こんなベージュが似合っちゃったりする。

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フィアット131のスタイリングだって、よく見りゃめちゃめちゃ練り上げられてるもんな。だから絶妙なブラウンなんかだったりすると、こんなにもエレガントに見えちゃうのか……。

もうほとんどアホである。

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でも、フィアットといえばどうあってもコレだコレ。ヌォーヴァ500とそのジャルディネッタ(ワゴン版)の色なんて、感涙モノでしょ。赤や黄色の500もめちゃめちゃカワイイけど、この2台の色、マジメにエレガンスすら感じちゃうぐらい。グッと来ちゃうよねぇ。

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ならば、近頃だいぶ手頃になってきた現行フィアット500はどうよ? と思い返すと、赤・白・青のいわゆる基本色がメインで、ときどき「おっ!?」と思えるカラーが上陸してきたりはするけど、それらの多くは期間限定だったり台数限定だったりするボディ・カラーそのものに意味のある限定車。チューコ車市場にはあまり出てこないし、出てきても高価だったりする。

そうなると、いわゆる基本色を手に入れて、リペイントにはちょっと抵抗があるからラッピングで理想の色に変えちゃう……とか? だったら何色がいいかねぇ……? 黒? 紺? ブラウン? チンクらしくネズミ色? それとも意表をついてブリティッシュ・グリーン?

妄想は暴走する一方、である。そう、やっぱり酔っ払ったオヤジのタワゴトのように……。

 

嶋田智之(しまだ ともゆき)
prof
1964年生まれ。クルマ好きがクルマを楽しみ尽くすためのバイブル的自動車雑誌として知られる『Tipo』の編集長を長く務めて不動の地位を確立し、スーパーカー雑誌の『ROSSO』やフェラーリ専門誌『Scuderia』の総編集長を歴任した後に独立。クルマとヒトを柱に据え、2011年からフリーランスのライター、エディターとして活動を開始。自動車専門誌、一般誌、Webなどに寄稿するとともに、イベントなどではトークショーのゲストとして、クルマの楽しさを、ときにマニアックに、ときに解りやすく語る。走らせたことのある車種の多さでは自動車メディア業界でも屈指の存在であり、また欧州を中心とした海外取材の経験も豊富。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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